|ゲルマラジオに遭遇す|目覚め|タンパを知る|アマチュア無線を知る|
|初めての送信機|
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アマチュア無線を始めたきっかけは人それぞれでしょうが、私自身の人生の記録として、無線との出会いや幼少期の思い出を書き残してみようと思います。「オマエの人生なんぞに一切興味は無い!」と言う方は無視してくださいね。
父は建築設計技師でSL(蒸気機関車)が趣味という理系であったから、子供たちもその影響を受けていたようで、何かモノを見ると分解したがる癖があった。その中には当然ながらラジオも含まれていたわけで・・・。
父は真面目の上に真面目が付いたような堅物で、我々兄弟に小遣いどころかオモチャひとつ買い与えてはくれなかったが、本だけはふんだんに買ってくれた。その中に「子供の科学」という小学生向けの月刊誌があった。何せ、何でも分解したがる兄弟だから、その本の内容には興味津々、毎月届くのを心待ちにしていた。
この雑誌の何かのプレゼントコーナーだったか、応募の商品だったか忘れたが、ゲルマラジオというものを見付けた。ゲルマラジオ?聞いたこともない。しかし、このラジオ、電池も不要で永久に鳴ると書いてある。こりゃ、物凄い! そんな凄いものが貰えるならと勇んで応募、いつ届くかと毎日学校が終わると一目散に帰宅する毎日。届いた商品はクリーム色の小さなプラスチックの箱にチューニングダイヤルが1つ。
(応募者全員に配られていたのでしょうね)
小学4年生の小僧とゲルマラジオ遭遇の瞬間であった。
ゲルマラジオは完成品で使い方が載っている。なになに、電灯線に繋ぐだと・・ 確かに繋ぐ線も入っている。そして注意事項も。やっぱり電気に繋ぐんだと勘違い、そこで電灯線「アンテナ」なるものを初めて知った。そうか、アンテナか。アンテナね。こんな知識は兄弟は誰も知らないな。と一人悦に入る。
さて、準備万端整った小僧はここで変なことを思い付く。そうだ、これは秘密の実験だから、両親に知られないように夜こっそりやろう。何故そんなことを思ったかは別にして、夜になるやいなや布団を頭からすっぽり被り、電灯線アンテナを差し込んでクリスタルイヤホンを耳に押し込んだ。 何やら聞こえる。ザ−ザ−という雑音の中からはっきりとラジオの放送が聞こえてくる。秘密の実験は興奮と共に始まり終わることを知らない。
さあこうなるとブンカイしたくなる癖が頭をもたげる。さりとてせっかく手に入れた宝物、元通りに戻せなかったら大変だ。さすがにブンカイ小僧と言えどもここは悩む。以前に、叔母から貸してもらった5球スーパーを内緒でブンカイ、中を覗いて複雑な配線に嘆息し、真空管が赤く点灯しているのを眺めただけで元に戻そうとしてうまく蓋が閉まらず、こっぴどく叱られた記憶が蘇る。しかし誘惑には勝てそうにないが・・・ ここで小僧はちょっと考えた。「ブンカイする前にゲルマラジオってものをよく調べてからにしようかな」・・と。偉いぞ小僧、一歩前進だ。
過去の子供の科学の記事にそんなものがあったような気がして片っ端から読み返していく。あった! 鉱石ラジオの作り方というものが見付かった。どうやらゲルマラジオというのは鉱石ラジオの一種らしい。大発見である。しかも、鉱石ラジオよりゲルマラジオはゲルマニウムダイオードという名前の部品を使ってあるらしく、「高級なラジオ」らしい。笑みが自然と零れ落ちる。解説には「配線図」が載っていて、ゲルマニウムダイオードはケンパという重要な働きをすると書いてある。食い入るように配線図を眺め、完全に頭にインプット。もう小僧に怖いものは何もない。無敵である。
ちょっと震える手を叱咤しながら蓋を開ける。そこには配線図に書いてあったゲルマニウムダイオードが。ポリバリコンと同調コイルもある。シンプル。あっけないくらい。しかし、目の前に見える小さなゲルマニウムダイオードは神秘的でヒミツに溢れているように思えたのである。このときの小僧の頭は、ゲルマラジオに完全に支配されていた。
ゲルマニウムダイオード 1N60