|ラドアンテナTop|製作のノウハウ|製作・調整に必要な測定器|設置方法|性能検証|技術考察(1)|技術考察(2)|失敗作例|他のアンテナとの比較考察|よくある質問集(Q&A)|自作ユーザー各局のご紹介|
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IHヒーター(電磁調理器)というものをご存知でしょう。
原理は、コイルに電源を加えて磁界を発生させ、相手(鉄の鍋やフライパン)に発生する渦電流による発熱を利用して調理すると言うものです。
IHヒーターでアルミの鍋やフライパンは発熱しません。低周波の場合ではアルミも発熱しますが、高周波では発熱しません。が、実際、IHヒータに於いても多少の電磁波輻射があることはIH技術者にとっては常識の事柄でした。IH技術者にとっては電磁波の輻射は重大な問題です。いかに電磁波輻射をさせないで熱に変えるかがIH技術者の腕の見せ所であり、各社のノウハウなのです。
IH技術の真逆で、熱にしないで電磁波にする技術的方向がスーパーラドなのです。実際にはIHとスーパーラドの挙動は全く違っていますので、IHを引き合いに出すことで多少の誤解を生みました。然しながらこの二者は磁力を扱うものであり、二次誘導電流を扱うものという認識から始めて頂けたらと、敢えてご紹介しています。
スーパーラドアンテナとは、磁力によって二次電流を発生させ、その二次電流が移動することによって大きな輻射抵抗を得るアンテナということになります。この電流の移動という部分が最大のポイントです。
(誘導電流の輪がシリンダ下部から上に移動するイメージ。)
単なる誘導電流だけだと、それこそIHになってしまいます。
誘導電流の移動についてはこちらで開発者が解説されています。動作説明文(PDF)をご覧ください。
誘導電流の移動が必要であるが故にスーパーラドのシリンダや円盤はある程度の大きさが必要になっています。そして、誘導電流の移動こそが大きな輻射抵抗を作り出す源であり、スーパーラドが効率良く電磁波を生みだす理由なのです。
スーパーラドは二次輻射を利用したアンテナですから、従来のアンテナのイメージを一旦どこかへ置いて考える必要があります。
しかし、何も特別な理論はありません。もし、貴方がサイト内ページの記述や開発者の解説からスーパーラドのシリンダや円盤上に小さな抵抗器がびっしり並んでいるようにイメージ出来たなら、それがこのアンテナの本質なのです。
材料/材質
ボビンに使う材料は色々考えられますが、ポピュラーなのは水道用の塩ビ管(排水管)でしょう。欠点は重量がある点、高周波特性が良くない点ですが、入手が簡単で安価、耐候性もまずまずで工作も容易です。PPやPEなどのボビンが入手可能であれば使ってみるのもいいでしょう。但し、紫外線暴露(耐候性)の問題や耐熱問題がありますから、実戦用にするにはかなり工夫が必要な材料です。ポリカーボネートは高価ですが優れたエンジニアリングプラスチックで、当局の現用機にはこの材料を使っています。
(注)HFローバンドでは塩ビ材質の水道管も使えますが、ハイバンドでは高周波損失が問題になってきます。実験では50MHz以上は全く使い物になりませんでした。(28MHz以下は未検証) 水道管に含有されるバインダーが問題なのかもしれません。
■材質の高周波特性は電子レンジに入れてみると判ります。チンしても発熱しない材質ならOKでしょう。但し、この方法は自己責任で。XYLと揉めても当局は一切関知しませんHi Hi
太さ
細いボビンなら設置が簡単でカッコイイですが、諸兄の実験結果から様々なデメリットが報告されています。細いボビンにコイルを巻くと当然欲しいインダクタンスを得るために相当数を巻かなければなりません。その結果、線間容量が分布的に存在することになり、本来の共振周波数以外にも擬似共振点(我々はゴーストと呼んでいます。)が多数発生することになり、調整が困難になります。更に目的周波数を追いかけて巻き過ぎれば「ヘリカルアンテナ」となってしまい、スーパーラドではないアンテナを作ってしまう恐れもあります。ボビンは多少太めの方が作り易いようです。
線材
裸銅線やアルミ線、被覆銅線、ツイスト線が使い易いようです。また、リッツ線は高周波特性が良いので非常に良い線材だと思います。アルミ線は軽くて使い易い反面ハンダ付しにくいのが難点ですが、末端を圧着端子で処理すればFBな線材です。表面にスズメッキした線材は高周波特性の観点から適当ではないようです。メッキでも金メッキや銀メッキはFBだと思います。高価ですがHi Hi
巻き方
スペース巻きを推奨します。
水糸と一緒に巻く方法や耐圧に問題の無い被覆線での密着巻きがあります。水糸の共巻きは工作が面倒な点がありますが、安価に再現性の良いコイルが作れます。スーパーラドは、コイルをいかに綺麗に等間隔に巻くかが成否を分けると言っても過言ではありません。コイルは出来る限り綺麗に巻いてください。
コイル長
開発者はこのアンテナの共振コイルをコイル径:コイル長を1:2以内に収めることを推奨しています。このことは結構重要な事項で、ボビン径の設定やスペース巻きする場合の線間の設定、ひいてはコイルのインダクタンスやQにも関係してきます。
コイルとシリンダの材料に同じ材料を使うと性能が上がります。理由はよく判っていませんが、実験結果ではそうです。従って、コイルにアルミ線を使った場合はアルミシリンダ、銅線を使った場合は銅シリンダにすると良い結果が得られます。
シリンダとは、ワイヤーアンテナのエレメントに相当する部分です。但し、その輻射はシリンダの下側に集中しており、ワイヤーアンテナとは異なる輻射をしているようです。このシリンダはワイヤーアンテナのエレメントと同様に扱うことは出来ません。すなわち、シリンダを長くすると輻射が大きくなる訳では無く、むしろ長すぎるシリンダはかえって輻射効率を落とすという点です。これは、二次電流がシリンダの最長部で止まっている必要があるからです。(シリンダ長はコイル間で形成されるキャパシタンスには関与しますので、シリンダ長で共振周波数を調整するために長さを変える方法を使うことはあります。)この点が誤解が多い部分ですが、シリンダ長は、コイル径の2倍程度(+α)です。シリンダは共振コイルとの間にキャパシタンスを形成し、共振周波数決定の一因としても寄与します。
シリンダに使う材料はアルミや銅が入手し易く、銅はアルミに比べて耐久性や扱い易さで有利です。薄いアルミ板や銅板が扱い易いです。アルミテープやクッキングホイルなども使えますが耐久性の観点から実戦向きとは言えません。実験程度に留めておいた方が良いでしょう。アルミ缶などを使う場合は出来る限り共振コイルと同径となるように工夫してください。理由は漏れ磁束を最小限に留めるためです。これは、シリンダと共振コイルを出来るだけ近く配置することと同じ理由です。異径のシリンダがコイルの中に入れるような状態では発熱などを引き起こし、効率が低下します。
どのような材料であれ、導通に気をつけてください。特に板状の材料の場合は繋ぎ目の導通に配慮してください。そして、コイルの真上に出来る限り隣接させて配置してください。
シリンダはアンテナエレメントそのものですから、充分に吟味し、工作にも注意を払ってください。
給電方法は2通り(タップ式とリンクコイル式)です。
タップ式
共振コイルに直接タップを出して給電する方法です。
給電用のリンクコイルは不必要ですから、よりシンプルな構造になります。デメリットはタップの出し方に工夫が必要になること、完成して設置する場合に構造上タップの出っ張りがあるため、防水処理に工夫が要ること。(太いボビンの場合は、ボビンのタップ位置に空洞を開けて、ボビンの「内側」からタップを出す方法もあります。)また、調整も慣れが必要です。(周波数調整とインピーダンス調整をタップ位置だけで行うため)この方法の場合はコイルのリアクタンス分を相殺するためのCを給電芯線とタップ間に入れる必要があります。タップ調整に慣れたOMにお勧めの方法かもしれませんが、アンテナ初心者にはお奨めしません。
リンクコイル式
リンクコイルを別に巻いて給電する方法です。
この方法のメリットは構造が簡単なことです。給電部を共振コイルの下側に配置すると調整はし易い(共振コイルとの間隔で調整)ですが、アンバランスになり易いようです。これは、アンテナの下側に容量的なものを配置するからだろうと思います。共振コイル上の下端にリンクコイルを固定する方法はアンテナが更に小型になりバランスも優れています。下端固定ですから、コイルの巻き数で調整することになり、多少調整が面倒かもしれません。試作でご紹介するのは全てこの方法です。
LCマッチング式
LCマッチやπマッチをアンテナ直下に入れる方法です。部品点数が増える点やそれなりの耐圧のバリコンが必要などの問題はありますが、調整は非常に簡単になります。
構造の簡易さならリンクコイル式、調整の簡易さならLCマッチング式と言うことになるでしょうか。
給電方法の違いで調整方法が変わりますが、やることは共振周波数調整とインピーダンス調整です。最初に共振周波数調整を行い、次いでインピーダンス調整の順番です。(逆は絶対に駄目です。)
このアンテナの場合、共振周波数を調整した時点でSWRが最良になりません(共振周波数≠SWR最良)。従いまして、アナライザーなどで最初からSWR最良点を探すような調整をやってしまうと、おかしな周波数(ゴースト)で調整を終了することがあり、結果、性能の低い(受信感度が悪い)ラドを作ってしまいます(当初はこの失敗をよくやりましたし、失敗された方の多くがこれで悩みます)ので注意が必要です。とにかく、共振周波数を合わせることを第一に考えてください。
当たり前の話ですが、共振していないアンテナでは絶対に性能は出ません。
本サイト上では給電をリンク給電でご紹介していますので、これに添った形でご説明します。
■給電部をタップする場合、リンクコイル下固定の場合
共振コイルの調整(周波数調整)
コイルは「少し長め」に巻いておくことです。(巻き過ぎ位でないと調整しにくいです。あまり少ないと巻き足すハメになりかねません。)
ボビンの太さやシリンダの長さで共振コイル・シリンダ間のキャパシタンスは変化します。
共振周波数はノイズブリッジ、ノイズジェネレーター、受信機、アンテナアナライザーなどで調整します。ディップメーターでの調整は、共振周波数でディップ点が浅い場合が多く、意外に難しいのでお奨めしません。私のお奨めはノイズブリッジ+受信機やノイズジェネレーター+受信機の組合せで知る方法です。アナログな方法ですが、ゴーストに騙されない確実な方法です。アンテナアナライザーで±jXが見れないアナライザーで調整する場合は、インピーダンスの変化点(ホップ点)を捜して調整します。
共振コイルの調整(SWR調整)タップ式の場合
次にSWR調整を行います。共振コイル上の2点をショートして最良点を見つけます。
アンテナアナライザーがあれば使用してもいいでしょう。ない方は小電力(5W程度)で送信し、SWRメータをアンテナ・送信機間に入れて調整して下さい。(確実なのはこの方法です。アナライザーを過信するのは禁物です。おかしいなと思ったらこの方法を試してみて下さい。)
ショートする上側点で周波数を、下側点でSWR調整です。
1)共振コイルはこの時点では「巻き過ぎ」になっています。その巻き数が仮に5巻きだとするとコイルのどこか適当な位置に5巻き分をショートします。
2)そして、下側のショート位置を動かして行き、SWRの最良点を見付けます。上側に最良点があった場合は、下側が周波数調整になります。
3)SWR最良点が見付かったら、今度は上側(上下逆の場合は下側)のショート位置を上下させて目的の共振周波数に合わせます。
4)そうすると、今度はSWRが上がっているかもしれません。その場合、2)と3)を繰り返していくと最良点が見付かります。ショート位置が上下だけでなく、左右も有効です。
*これは一体何をやっているのかと言いますと、ショートしたことで出来る共振コイルとシリンダ間の浮遊キャパシタンスの増減を利用して、インピーダンスと周波数の調整を行っているのです。
*室内で調整した場合、空間に上げると共振周波数が下がることがままあります。このアンテナは周囲の影響を強く受けますので、ボディエフェクトや周囲の状態でキャパシタンスが形成されているためです。このため、アンテナの上げ下げを行う必要も出てきます。
給電部を固定した場合はSWR調整を共振コイル上でショート(シャント)を行うことで調整しましたが、給電部(リンクコイル)を共振コイル上に置いた場合はリンクコイルの巻き数で調整します。位置は共振コイルの下端に置き、巻数を加減してインピーダンスを合わせます。巻数は殆ど半端な数になります。この方法は、リンクコイルが共振コイル上にあるため調整がやや面倒です。
ご注意!!
リンクコイルを共振コイル上で移動させて調整する方法は、調整はやりやすいですが共振コイルの上側(中心より上)にSWR最良点が見付かってしまう場合もあります。しかし、共振コイルの上部には高圧が発生し、極めて危険です(私も某OMも危険な目に遭いました)し、バランスも悪くお奨めできません。
巻数と位置で行います。共振コイル上に置いた場合よりも多めの巻き数で巻き、共振コイルとの距離で調整します。この時、巻き数があまりに少ないとリアクタンス分のキャンセルが出来なくなりますから注意してください。巻き数は周波数によって違います。給電はコールド側から行います。
いずれの方法でも別途に周波数微調整用の可変C機構があると更に調整が易しくなりますので、設計段階から入れておくことをお奨めします。
HFローバンドやLF帯では、共振コイルに並列の固定コンデンサを付けることがあります。(共振コイルとの間に空気コンデンサを形成する)
自己共振型と呼んでいる方法では、共振させるためのCを共振コイル・シリンダ間(その他にもコイル線間のCやリンクコイルのCなどもある)を利用して共振させていますが、それらは不確定なCの寄せ集めであるため、多少の知見が必要です。
低周波数のラドを作る際に、推奨される共振コイル長(コイル径:コイル長=1:2以下)があるにも拘わらず、コイルを巻き続け、共振したらラドの動作ではない(ヘリカル様)アンテナを作ってしまう危険性もあります。
C成分が多いと帯域が狭くなり、使いずらい面もあるのですが、確実な共振を得るためには固定コンデンサ(バリアブルでも良い)があっても良いと思います。
但し、別途に固定コンデンサを挿入しない自己共振型でも多数の成功例があり、自己共振型を否定しているわけではありませんので、念の為。
固定(バリアブル)コンデンサをどう作るかという命題に開発者は空気コンデンサを推奨されています。バリアブルはともかく固定コンデンサであればアンテナ本体の上側から導体を入れてキャパシタンスを形成する方法があります。この方法は3.5MHz用スーパーラドに実装した方法で、簡単に固定キャパシタンスが作れます。この導体をモーターなどで上下させる機構を作れば室内で共振周波数をコントロールできるでしょう。また、シリンダの上にもう一つのシリンダを作る方法でも固定C(調整も出来るので、半固定C)が作れます。但し、この方法は同相電流の発生がありますから、CMCを利用するなどの対策が必ず必要です。
135KHzのような周波数ともなると欲しいCは数100pF超にもなる場合が想定されます。そのような場合には電力用コンデンサの利用が妥当かもしれません。
当局のスーパーラドは全てアースを付けています。理由は安定動作させるためです。次項のCMF/CMC(コモンモードフィルター)でも記述していますが、スーパーラドのコイル部は高電位になっています。これにフィーダを付ければ、フィーダー側が電位的に振られて安定しにくいのです。そこで、アースをすることで電位を固定しているわけです。多少流せば良いだけですから、良好なアースが必要なわけではありません。
アース長については、1/4λ、1/4λ+1/2λとその整数倍は出来れば避けてください。1/2λ長とその整数倍がベストですが、神経質になる必要はありません。タワー設置であればタワーにアースすればOKでしょう。
前項でも触れましたが、スーパーラドの共振コイルには高電圧が発生し、ハイインピーダンスです。CMFはアースの考え方と全く同じで、CMFを入れることでローインピーダンスにしようということです。
そこで、フィーダー側1/4λ位置にCMFを入れてやり、フィーダに波が乗れない(ローインピーダンスにしてしまう)ようにするのです。1/4λ位置が最適ですが、1/10λ位置でも効果は充分です。スーパーラドアンテナのCMFの挿入位置はアンテナ直下ではありません。
実際の設置方法は、1/4(1/10)λ位置を中心にして、前後にクランプコア(通称パッチンコア)を設置すれば良いと思います。200W程度であれば、10-15個程度で充分です。
いずれにせよ、同軸に大きな同相電流が流れている状態ではS/N比が悪く、性能も良くありません。決して同軸を含めたアンテナシステムとならないように室内で充分な調整を行ってください。
このページについて
このアンテナに関する知見は、現時点での当局の実験・試行錯誤、開発者からのアドバイス、同志の諸OMの実験結果の末に知り得た情報や結果に由来します。
つまり、情報が正確であることやアンテナの性能を保証している訳ではないと言うことをご理解ください。
大きな可能性を秘めていると我々が確信しているこのアンテナを広くみなさんに知って欲しいと願っているだけです。
このアンテナにはまだまだ未知な部分があり、私を含め仲間たちはその探求を行っているのです。